Nujabesと私

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[今日の朝食]
● 牛乳
● 味噌汁
● 晩御飯の残り 鍋と雑炊

「やあやあ、悪いがお邪魔するよ」

寮で仲良くなった一歳年上の友だちが部屋にやってきた。高校時代の多感な一年をアメリカで過ごした彼は、帰国後は保健室の先生にラップを披露していた。

「ロー、この曲知ってるか」

流れたのはShing02のLuv (Sic), Part2

戦争がテーマだった。YouTubeのPVを見ながら、紙芝居みたいなイラストと厭世観が浪人時代後の鬱屈とした自分にハマって、しょっちゅう聴くようになった。

暫くしてからアメリカに留学して、白人と中国人のルームメイトに聴かせてやったけど、全然響かなかった。


「ロー、この曲知ってるか」

会うた度に違う女の子を連れてくるドイツ人が急に話しかけてきた。

「これ、俺が知ってる日本の唯一の曲。昔からよく聴いてんだ」

Nujabes? 聴いたことない。てか日本人?

流れたのは延々とイントロみたいなテンポが続く曲だった。

メキシコ人の友人の家でタコスとチリコンカンを食べて上機嫌だった私は、その曲をBGMに気持ちよくビールを飲み干した。

「いやこれ、Shing02じゃん」

「いや、Nujabes」

BGMのテンポがLuv (Sic), Part2と全く一緒だった。

真夜中の旧市街をほろ酔い気分で帰った。

シェアハウスに着くとルームメイトはみんな寝ていた。一人のキッチンでビールを飲んだ。が、しんとしたキッチンで酔いが頭の先からとっとと抜けていくようでしまりが悪い。どうも面白くないので、冷蔵庫からルームメイトが残したパスタをつまみ食いして、パソコンを開いてNujabesを流した。


「これ、Nujabesですよね?」

大阪のとある古着屋のドアを開けると真っ先に音楽が気に掛かった。

間違えて入ったその店は、雑居ビルの3階の奥にあった。打ちっぱなしのコンクリートの部屋にいくつかハンガーを入れただけの狭い店だった。

「世話になった人がよく流してて。気に入って曲教えてもらったんです」

20歳くらいの店長は腰まで届くんじゃないかってくらいの長髪で、華奢な体をしていた。古着屋の人ってだいたい痩せてるのは何故だ?ドイツの炭鉱へ出稼ぎ労働していたデンマーク人が着ていた黒のジャケットが気に入った。象牙のボタンが袖についている。

コンパートメントNo.6を見て、ヨーロッパにセンチメンタルになってた私にはうってつけだった。

「Nujabesの話でこんなに盛り上がれたの初めてです」

ジャケットが売れて、若者はいつまでも嬉しそうだった。


「オーナー、今日はNujabes流してんね」

ウガンダで働く専門家がそう呟いた。

「ですよね?ここのオーナー誰ですか」

隣の女性に訊いた。

「私です。私がここのオーナーです」

私が本日の主役です、みたいに女性は答えた。

「Nujabesって俺たちが大学生くらいの時に流行ったんよ」

「主人は京都で料理をやっていたんだけど、こっちに来てもらったの」

途中でやってきた主人はNujabesみたいな顎髭を生やした金髪のイケオジだった。

Nujabesが生きてたらこんなだったかなぁ




ウガンダで初めてカツサンドを食べた帰り道、専門家の車で帰る。

「ちょっと待ってね、やっぱこれだよね」

流れたのはLuv(sic) Part 4だった。

ウガンダドライバーは静かに車を動かした。

中心街から夜の郊外に無数の車とバイクが駆け抜けていった。

傷んだマフラーの排気音と砂埃が道路に立ち上がっていた。

「これ、EVISBEATSですよね?」

「え、これ知ってんの?」

「ゆれる、とかめっちゃ聴いてます」

「田我流も?え、もしかして俺たちマブダチ?」

ホテルで私を降ろした後、黒のランクルは真夜中のカンパラに消えていった。



(ウガンダの日本レストランのYAMASEN)

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