学生ビザを延長したこと

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浪人が決まった翌朝、私は勇み足で書店の高校参考書コーナーに向かっていた。立ち読みしながら、合格の秘訣を読み漁った。進研ゼミからZ会、駿台から東進ゼミナールにいたるまで両手いっぱいに抱えていた。ポレポレ、マドンナ、システム現代文。。。

現役生時代、部活に明けくれ、文化祭に入り浸り、クーラーの効いた塾室は心地よい安眠室だった。なぜか、私は試験が終わると、とたんに勉強欲がでてくるタイプの人間だったのだ。試験結果を見た時、とくに実感も、虚脱感も、挫折感もなかった。試験に落ちてから、やる気がやっと出てきたのだ。誰かが、やるなら今でしょって囁いた。山積みになった自伝を読み漁った。元ヤンキーが東大にはいったり、トップ予備校講師になる道のりを読んで感動していた。

早速、4月から受験までのプランを作った。音読、単語、教科書の通読から、模試の日程、センター試験、二次試験、志望校にいたるまでびっしり書き連ねた。1日は朝5時に起床して、12時まで、風呂は30分、昼飯30分、夜飯30分、電車の中では常に英単語を3ページ終わらせること。いたるところに勉強の要素を詰め込もうとした。詰め込もうとして、すぐにパンクした。20分長く、寝ようものならその日が終わるまで癇癪が収まらなかった。教科書の通読が予定より、とても間に合わないと感じた時、すでに受験に落ちた気でいた。結果を見ずして、計画に食われたのだ。

あれから数年、怠惰な私は2年はおろか修士取得に3年を費やしてしまった。浪人のころとなんら変わっていなかった。変わったことと言えば、計画に食われないよう、計画することをやめたことくらいだ。赤ペン先生だってスタートダッシュが大事だって言ってたじゃないか。結果、2年の期間をもらっていた学生ビザを更新しなければならなかった。

そこで本記事では学生ビザ更新の経過をまとめようと思う。

2018年某日某所

私はミュンヘンの喧騒を離れ、郊外のフライジングへと住まいを移した。自然科学系の授業は主にフライジングで行われるためだ。4セメスターを終えて研究プロジェクトと修士論文のみを控えた私は暢気にYoutubeでデットバイデイライトばかり見ていた。8月も終わりに近づき、ふとした思い付きから「学生ビザ、更新、ドイツ」とググってみた。

するとビザ更新のための予約には数か月かかる場合がある、更新に失敗すれば強制送還もしくは罰金、などなど沢山のココロオドル情報が入ってきた。ビザ失効まだ、1ヶ月を切っていた私は、そこでアンコールをかわしてDance Danceするわけにもいかず、そっとタブを閉じ、デットバイデイライトの新動画を漁るのであった。

9月、ある明け方

修士課程修了をまじかにして、強制送還ではさすがに目もあてられない。ということで、一日発起してフライジングの外人局を調べてみた。するとHP上には必要な書類が何も掲載されていない。メールを送ったところ、PDFが届いた。どうやら、名字の最初の頭文字に沿って、担当者とアポを取らないといけないらしい。例えば田中さんであれば、Tが最初の文字なので、ROTからTARまで担当のダニーさんになる。

ミュンヘンのKVR(参考記事)とは違い、フライジングでは事前にアポ取りが必要なのだ。

早速、ビザの発行期限など事情を説明したところ、パスポートをスキャンして送ってほしいと言われた。送付後、アポの予定日と共に以下の必要書類がついに明らかとなった。

**必要書類

  1. 有効なパスポート(Gültigen Reisepass)
  2. パスポート用写真(Aktuelles, biometrisches Lichtbild)
  3. 健康保険証証明書(Krankenversicherungsnachweis)
  4. 在学証明書(Immatrikulationsbescheinigung)
  5. 部屋の大きさ、及び家賃が記載された賃貸契約書(Mietvertrag mit Angabe der qm und Höhe der Miete in EUR)
  6. ドイツでの滞在費を自弁できる経済的能力の証明書(残高証明書、奨学金、収入証明細など。)(Nachweis über ausreichenden Lebensunterhalt (Kontoauszug, Stipendium, Lohnabrechnungen))
  7. 手数料、約106ユーロ(Gebühr in Höhe von ca. 106 EUR)**

5に関して。私の場合、不動産会社を通さず、大家さんから直接家を借りていた。口頭契約のため、正式な賃貸契約書をかわしていなかった。そこで今回、フォーマットを作り、署名してもらわないといけない。

役所では賃貸契約書には決まった書式が明記されていない。私の場合は主に以下のような簡単なフォーマットを作成した。念のため、各役所ごとに書式は確認されることをお勧めします。

Mietvertrag(賃貸契約書)

Zwischen (Vermieter*in) <=貸した人

und (Mieter*in).<=借りた人

Der Vermieter vermietet dem Mieter zu Wohnzwecken die im Hause „住んでいる場所“ im 住まいの階. Stock. Die Wohnfläche beträgt ca. おおよその部屋の広さ qm. In der Wohnung befinden sich eine Küche, ein Bad mit Toilette.

Das Mietverhältnis beginnt am いつ住み始めたか und läuft auf unbestimmte Zeit. Die Miete beträgt monatlich 家賃€ ohne Nebenkosten.

Datum, Unterschrift (Vermieter*in)

………………………………………<=貸した人の署名

Datum, Unterschrift (Mieter*in)

………………………………………<=借りた人の署名

大家さんのサインのもと提出した。これは特に何事もなく済んだ。

6に関して。別の記事にて学生ビザの発行にはSperrkonto(封鎖預金口座)の発行が必要だとご紹介した。今回は、アポ予定日がビザ失効数日前ということもあり、、絶対に負けられない戦いがそこにはあった。なのでSperkontoも含めて経済能力証明書について問い合わせたところ:

  1. 当局の学生ビザ延長の際にはSperrkontoは不要
  2. 月当たり720€の費用を賄うことができる経済能力を証明する書類

があればよいとのことだった。(前述の通り、以上の詳細は一切、HPには掲載されていない。)

このほうに問い合わせてみると、出てくる、出てくる。ねるねるねーる。ちょっとしたロールプレイングゲームみたいだ。説明書も攻略法も明らかじゃないから、いちいち同じ旅人に会話しないといけない。また上記の文言も秀逸だ、月当たり720€の費用を賄うことができる経済能力を証明する書類、ということは今、月当たり720€あれば良いのか?収入が付き720€あれば良いのか?わからない、わからないからこそ、経験則と友人の噂話をつてに準備するしかない。

当日

Ryo:「こちら必要書類一式です」

アドバイザー:「Ja(はい、大丈夫)」

Ryo:「ビザおりますか?」

アドバイザー:「Nein。」

Ryo:「?」

アドバイザー:「Nein。(無理ね)」

Ryo:「?」

アドバイザー:「間に合わないので仮ビザ(Fiktionsbescheinigung)渡しますね♪3か月後にビザが発行されるのでその時、こちらに来てください。」

Ryo:「?」

アドバイザー: 「あと、あなたの預金口座残高、720€で割ると、おおよそ12か月くらいなので今回のビザは1年です」

Ryo:「?」

掘り起こすべきものはまあったようだ。仮ビザとはビザ発行までの間に発行されるもの(のようだ)。仮とは言え、これを使って、ドイツ国内外への出入りもできる。但し、猶予期間は半年までのため、それまでに正式なビザを手に入れなければならない。また、経済証明について、今回の場合、720€月割りで計算した期間がそのままビザの有効期間となった。残高を倍にすれば、また2年となったのか。わからない、わからないものは考えない。自伝を読み漁り、計画に食われ、受験に失敗したわたしがたどりついた一つの享受がそれなのだ。

卒業後の労働ビザ切り替えについては別記事でご紹介する。

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