学生ビザがもらえなくてとても苦労したこと

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10月某日。私は焦っていた。

こちらに来てから四六時中焦っている。が、この日は特に焦っていた。

ビザが手に入らない。それどころか、ビザなるものがこちらにあるのかもよく分からない。ドイツという一国に入城する入場券ももらえなかった。

ドイツ大使館によると、学生ビザ取得の為に必要なアイテムは7つとある。(2016年12月時点)

**1. 申請書(Web版申請書1部および長期ビザ申請書2部)と誓約書

  1. パスポート用写真2枚
  2. 有効なパスポートとコピー2部
  3. 日本国籍者でない場合は日本の在留カードの原本とコピー1部
  4. 入学許可通知原本とコピー2部
  5. ドイツでの滞在費を自弁できる経済的能力の証明原本とコピー2部
  6. ビザ発給手数料:60ユーロ
  7. 上記以外の追加書類**

驚くことなかれ、ビザはドイツ国内で取得する。それはなぜなのか?

わからない。

”なぜ”という問いを放棄することは、長きにわたる海外滞在の上で時には必要な処世術なのだ。

なぜ、空は青いのか。

なぜ、私の瞳は黒いのか。

なぜ、この世界から戦争はなくならないのか。

なぜ、ケビンデュラントはウォーリアーズに移籍したのか1

なぜ、ドイツ大使館は学生ビザを発行しないのか。上記以外の書類とは何か。それらすべての疑問はドイツというぬるい小雨の降りしきる沼地に放り込まれ、二度と明らかとなることはないのだ。

天才・博学な方であれば突き詰めてこの答えを出してくれるかもしれない。しかし私はアインシュタインでもガリレオでもなく、YoutubeとNBAがあれば大抵のことは満足する人間だ。それに、上記の問いに答えずとも相変わらずドイツのマックチキンは美味しいのだ2

だから考えない。考えずにドイツに来てから学生ビザを発行しよう。

だから賢明・尊大なる御ドイツ大使館様の仰る通り、7つのアイテムを用意するのだ。

KVR

ミュンヘンの市役所,通称KVR。ミュンヘン在住の学生はこちらでビザを発行する。

1. 一合目:海外保険

民間保険 / 公的保険 の二つ。前者は手続きカンタン(30歳以上でも申し込める)、やや割高。後者はその反対。失われた90年代に生まれ、倹約精神が研ぎ澄まされた私は、費用重視の公的保険を選択した。AOKという公的保険を扱う会社に、オンラインで申し込めば、らっという間に登録できた。引き落としもドイツ国内で銀行口座を開設するまで待っていてくれる。

AOKのミュンヘン支部に連絡後、メールで申し込みフォームを届けてくれた。そのフォームを提出すると約1週間で証明書が発行される。後日、住まいの登録を済ませば、勝手に保険証が届くという仕組みだ。

2. 二合目:入学証明書

ミュンヘン工科大学修士の場合、入学証明書発行は、1.学費を支払い、 2.保険証明書をオンラインで提出することで事足りる。資料提出後、こちらも1週間以内で入学証明書がゲットできた。

3. 三合目:収入証明書

奨学金、代理人、自費の3種類に分かれる。自費である私は、ドイツで口座を開設した。ドイツ語不得手な私はここで大いにてこずった。

ドイツ大使館では、有り難いことにドイツ銀行(Deutsche Bank)へのリンクがあった。しかし、こちらのサービスは特に時間がかかり、数か月も口座の開設に時間を要する等々、色々と風の噂を耳にしていた。

そこで私が選んだ口座はヴォルクス銀行(VolksBank)。理由はデュッセルドルフ滞在時に住まいの近くの支店があったから。窓口で「学生ビザ用の口座がほしいのですが」と尋ねた所、すぐに面接予約をしてくれた。

面接では、担当のドミニクさん(仮名)が年間の収入、口座維持費用(月2.5ユーロ)、資産運用などなどについて懇切丁寧に教えてくれた。ドイツベタで、資産運用どころか資産のシの字もないような私に一生懸命、英語で話してくれた。手持ちの辞書で一緒に内容を確認し合ったりもした。

購入したシムカードが不良品だったり、レストランで食べたもので食あたりになった。大学は時折、下水処理場が爆発したかと思うほど、時に強烈な馬糞の匂いがした。ドイツでは忘れがたき思い出があるわけだけど、とりわけにヴォルクス銀行のドミニクさんの笑顔は忘れがたき良き思い出だ。ありがとうドミニクさん。

4. 四合目:住居登録

住宅戦争を経て、大家さんとの契約を交わした後、住居登録を市役所で行う。ミュンヘン市内の場合、お世話になるのがKVRという役所だった。幸いなことに大家さん同伴だったため、KVR内の難解な迷路も、大家さんの背中を追うだけですり抜けることができた。役所内はPoint1,2,3…と窓口が名付けられ、ローマ字別に区分けされている。(例えばNakanoの場合は、N-PのPoint窓口になる。)

10時ごろ到着するとKVRは外国人で大いに繁盛していた。お陰様で6分程の面会のために、4時間待つことになった。面会では氏名、住所、滞在目的、パスポート提示などが極めて業務的に進められた。タブレット上のフォームにサインをすると、Anmeldebestätigungと書かれた書類を頂戴出来る。さああとは学生ビザを御頂戴するだけや!

発券機

こちらの機械でチケットが発券される。 掲示板

壁に張り付いたこの掲示板に自分の番号が出るのを待ち続けるのみ。

5. 登頂:学生ビザ

学生ビザの発行場所、実は同じKVRにある。列に並んでも、閉店時間までに付かなければ全て追い返されてしまう。そのため、再度、別日にやって来た。

こちらはチケット発券前に列に並ばなければならない。待っている間にアドバイザーらしき人たちが一人ずつ書類を確認してくれるので、早速確認。

Ryo:「海外保健証明書」

アドバイザー:「Ja(はい、大丈夫)」

Ryo:「入学証明書」

アドバイザー:「Ja」

Ryo:「住民登録書」

アドバイザー:「Ja」

Ryo:「証明写真」

アドバイザー:「Super」

Ryo:「収入証明書」

アドバイザー「Nein。」

Ryo:「?」

アドバイザー:「Nein。(ダメです。)」

Ryo:「?」

アドバイザー:「銀行でここにサインをよろしくね♪」

ススっと取り出されたのはSperrkontoの文字。英語ではBlocked Account、日本語では封鎖預金口座と言う。ちなみに私が作ったのはSparkonto。こちらは貯蓄預金口座。某御大使館サイトにはこれが載っていない。なぜか?僕はここでまた考える事をやめる。黙ってマックチキンで腹を拵え、黙って銀行まで後戻りするのみなのだ。

6. 三合目(二回目):収入証明書 封鎖預金口座

ヴォルクス銀行さんで封鎖預金口座に変えてもらおう。ということでミュンヘン銀行に行ってみた。(ヴォルクス銀行は地域によって銀行名が変わります。)見るからに銀行マンなドイツ人がそこにいた。

開口一番、「悪いけどドイツ語が分からない学生には僕は封鎖預金口座は開設しないんだ。僕は英語が話せないからね。」と英語で彼は言う。こちらのミュンヘン銀行はジョークが超一流のようだ。

仕方なく名声高きドイツ銀行に行ってみる。封鎖預金口座お願いしますというと「じゃあオンラインフォームで申し込んでください。」とのこと。窓口対応は受け付けない。インターネット開設していない人はどうするんだろう。デバイスをまだ持っていない人はどうなるんだろう。ここで考える事をまたやめる。どのくらいかかりますかと尋ねると、数週間から数か月かかります、とのこと。期待を裏切らないドイツ銀行。そこに痺れる憧れる。

帰りがてら、別のミュンヘン銀行に寄ってみた。ここの人が気さくで、封鎖預金口座は仕組みが煩雑で、口座を閉めてから現金の返金にもとても時間がかかるよと教えてくれた。ちょっとあまり大きな声で言えないけどスパーカッセ(Sparkasse)が良いよ、と教えてくれた。

ということでやってきましたスパーカッセ。赤い文字でとても目につきやすい銀行スパーカッセ。ドイツのスーパー、レーヴェ―(Rewe)の系列店かと思っていたスパーカッセ。スパーカッセのスタッフはとても知的だ。とても知的に英語を話し、とてもスマートに口座を即日開設してくれた。そんなスパーカッセ の封鎖預金口座内容はこうだ。

  1. 月の引き落としが720ユーロまで

  2. キャッシュカードの発行なし。 店舗窓口にて引き落としを行う。

  3. 維持手数料なし。

ドイツ銀行ではキャッシュカードが発行されるらしい。クラスメイトは申し込み6ヵ月経ってもキャッシュカードがもらえていなかった。すごいぞドイツ銀行。

7. 登頂(二回目):学生ビザ

封鎖預金口座の紙きれを抱え、受付開始時間10分後に入所。すでに長蛇の列になっていた。当日のダイジェストは以下の通り。

アドバイザーからOkay

受付にて再度書類審査

チケット発行

待ち時間中に申請書を記入

面会

許可証らしき紙きれをもらう。

下階にて発行料金(60ユーロ) / パスポート・紙きれをだす

チケットゲット

シールのついたパスポート入手

帰宅

8時半に入城後終わったのが午後の3時。その約98%が待ち時間だった。

こうしてやっと2年分のビザを頂くことが出来た。

受付窓口

受付開始10分前に到着したが既に20~30人の列が出来ていた。

約3ヵ月に渡るビザの手続きを経て私が感じたポイントを書きだしておく。

1. 優先順位をつけよ

多くの証明書があるが、各種書類には各種必要書類がある。滞在するにはこいつが本当に学生なのかということで入学許可証を求められる。入学許可証を得るには保険証が必要だ。保険証を得るには?オンラインフォームを提出しなきゃいけない。ということで学生ビザの第一歩は保険証のオンラインフォームから始まる。

その後は上に示したような順番で進めば、芋づるのようにホイホイと書類がわいてくる。またたとえ、決まった住まいがなくとも民泊の住所や、大学から仮の寮の住所登録書類で事が済むこともある。(でないと3ヵ月以内にビザが手に入らない。)

2. 現地のナマ情報を手に入れろ

現地のナマ情報こそが大正義だ。AOKに限らず、銀行や市役所までメールで質問を送るとしっかりとした返事や必要書類をつけて返してくれる。大使館の日本語情報も良いが、加えて発行元に聞くのが一番安心だろう。

例えば、上記の収入証明書はKVRのサイトでは封鎖預金口座の記載がある。また学生ビザはドイツ語でAufenthaltstitelというが、これは厳格にはビザというよりは滞在許可証、英語でいうとExtensionとかになる。だからVisaと現地の人に伝えても理解に齟齬が生じる。また必要金額だって地域によってことなる。(ミュンヘンKVRの場合は60ユーロ)

このように現ナマを手にする方が良いという事をこうしてビザについてくどくど私見を述べいる文章をを最後まで読んでいただいたみなさんにお伝えしておきたい。

  1. 今シーズンオフにネッツに移籍しましたね。勢力が分散して、楽しめそうです。てか、八村さんおめでとうございます! 

  2. ドイツ・ミュンヘンのチキンクリスプはマヨネーズソースではなく、甘いチリソースになっている。 

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