MLSEPにおける国際恋愛の多様性に感化されたこと
アメリカ人 : 「クラス内の公式言語をアングロサクソン語にすべきだと思う。英語話者/ドイツ語話者ともに理解できる言語だからね。」
アルジェリア人:「アングロサクソン語ってドイツ語なの?」
アメリカ人:「ドイツ語だけど、ドイツ語じゃない。英語でもあるし英語でもない。」
ギリシャ人:「?」
アルジェリア人:「ちょっと待ってくれ。これはどう考えたっておかしい。クラス内の共通言語は英語であるべきだ。」
アメリカ人:「いや、僕らがドイツにいる限り、ドイツ人が理解できる言葉じゃないと。それには西欧言語の起源であるアングロサクソン語がぴったりなんだよ。」
アルジェリア人:「クラスを代表して言うけど、それは絶対間違ってる。」
ギリシャ人:「えっと、じゃあ古代ギリシャ文字が良いのかな?」
(大学のキャンパス1)
私の通うミュンヘン工科大学の修士コースLife Science Economy and Policy(通称 MLSEP)は全て授業が英語で行われる国際コースである。
生命科学、経済、政策を一括りにするコースにくる輩とはどんなゲテモノなのだろうと思っていたが、ご期待に漏れず、髪の毛も、瞳も、肌の色も全く違うゲテモノが集まっていた。(そしてそんな環境に心地よさを感じているのが私だ。)
今回はそんな愛すべきゲテモノをご紹介してみたい。
<彼らはどこから来たのか>
「もし世界が100人の村だったら」という文章があるが、MLSEPはそんな仮想世界を想像するにピッタリな場所である。そこは確かにある一つの世界が教室に凝縮している。
コース全体の人数は40人弱。出身国は中国、シンガポール、インド、パキスタン、ギリシャ、コソボ、アルバニア、トルコ、ドイツ、ジョージア、イタリア、スペイン、メキシコ、ブラジル、ロシア、アメリカ、ペルー、ドミニカ共和国、ウガンダ、ガーナ、ナイジェリア、アゼルバイジャン、そして我が国日本。
女性が21人、男性が19人。
13人が白人で、27人が有色人種である。
8人がアジア人で、
4人がアフリカ人、
11人が南北アメリカ人
13人がヨーロッパ人
あとの4人は愚純な私には場所のわからない人たち。
4人が中国語をしゃべり
7人が英語を
6人がドイツ語を
4人がスペイン語を
2人がヒンディー語とウルドゥー語を
1人が日本語を
その他約半分はグルジア語、イタリア語、ポルトガル語、トルコ語、アゼルバイジャン語を話す。
大多数が異性愛者で、その他少数がもしかすると同性愛者かもしれない。
大多数が豊かな家庭に育ち、3人の母国は貨幣危機に瀕している。
今までそれが国であることすら知らないこともあった。ガーナはずっとロッテの赤くラッピングされた甘いチョコレートだと思っていた2。ジョージアと聞けば、「ボス、いつもそばにい・て・ね♪」と浜崎あゆみが可愛く歌っている缶コーヒーのことしか浮かばなかった3。
<彼らは何をしてどうしてここに来たのか>
国に限らず、大学の専攻も様々だ。経済学、生物学、ビジネス、政治学、薬学,化学、都市計画、環境資源マネジメント、地理学、応用微生物学、生物プロセス工学、心理学、マーケティングとか色々である。(そこに国際コミュニケーション学がちょこっと入ってくる。)
年齢層は、上は40代から下は20歳まで。アラサー世代が大層を占めている。ドイツ専門学校にて経済を教えていた者。祖国では医者だったが、突如環境コンサルタントの道を決意した者。母国のインフラを改善すべく、祖国を代表してやってきた者など様々である。
そして国際恋愛者が多い。仮名を下にその恋愛プロフィールをご紹介したい。
・スペイン版ケティペリーのナナさん
数年前、アイルランド留学中に現地学生と恋に落ちる。その後、彼はドイツミュンヘンでの仕事に就くことに。数か月の遠距離恋愛後、ナナさんはめでたくTUMに合格。現在はミュンヘンにて仲睦まじく暮らしている。
・一桁気温でもフード一枚で元気はつらつなアルバトロスさん
ミュンヘン工科大学に晴れて合格、生活費を賄うために母国の政府奨学金に応募。すると面接会場にひと昔前に合ったメリーナさんの姿が。話を聞けば、TUMの同じ科に進むことが判明!その後、何度か顔を合わせていくうちに親しい中に。今では同じ屋根の下で愛を育んでいる。
・被覆率90%、防寒対策バッチリなドンチャラさん
イギリス大学院に修士留学。そこで現地学生と恋に落ちる。その後、さらなる研究を求めTUMに留学。彼氏を引き連れ渡独。現在彼氏はドイツにて職探し中。先日、めでたく婚約成立。
こんな感じで、国際恋愛に至っている方が結構多い。アメリカ生まれのドイツ育ちの方がアルバニア人と付き合っていたり。ドイツ系南アフリカ人が韓国人と結婚していたり。その中身は移民大国ドイツならではであり、もはや国籍だけでは彼らの生い立ちは全く形容しえない状態だ。
もし機会があれば、ビデオカメラ片手に「Youは何してドイチェへ???」と根掘り葉掘りその恋の来し方行く末を聞いてみたいものである。
<そして彼らはどこへ行くのか>
ドクターを目指すもの、もともと所属していた政府機関に戻るものなどこれも一者一葉である。母国に戻り仕事をしたいと思っているのは中国やアジアに近い人達の傾向だ。
一方でアメリカ人の中には、欧米圏での勤務や中東・アジア・アフリカに目を向けている人もいるし、現にそういったキャリアをすでに積んで来ている方もみかける。
そのようなケースを除けば、大半の人たちはドイツ・ミュンヘンに残り、仕事をしていきたいと考えている。こちらが気落ちしてしまうくらい素晴らしい資質と気概をもった人たちを魅了するだけのものがここミュンヘンにはあるようだ。
街並みだって素晴らしいし、物価は確かに高いが、外食を減らせば東京と支出だってそんなに変わらない。じゃああなたはどうなんだって?御多分に漏れず、私もそんなミュンヘンに魅了されてしまっている一人なのだ。
(大学のキャンパス内にて4)
アゼルバイジャン人:「じゃあインド・ヨーロッパ祖語はどうだろう。ヨーロッパ人、イラン人、あと北部インド人みんなが理解できるわ。」
アメリカ人:「いや、それじゃダメなんだ。起源としてはドイツ人+アメリカ人=アングロサクソン人。だから共通言語はアングロサクソン語だよ。」
アゼルバイジャン人:「あら、もっと彼らの元をたどればインド・ヨーロッパ語族よ。」
アメリカ人:「あのね君、せっかくの僕のジョークを台無しにしてくれてるよ。どうもありがとう。」
アゼルバイジャン人:「こちらこそ、どういたしまして。」
ギリシャ人:「?…えっとじゃあ古代ギリシャ文字も無しってことかな。」
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